勘定科目の分類設計

スキャンした書類から起こした行に、勘定科目・補助科目・費目・取引内容の4層を自動で付けるための設計。顧問先の実データで、いまの分類がどこで混線しているかを数え、それぞれの層の役割と、科目ごとの切り方を決める。

第2版 2026年9月18日
第1版から直したこと
  1. 「税区分が割れるなら補助を分ける」と書いていた。税区分を決めるのは費目の役目で、補助は「合計が要るまとまり」で切る(03・04)
  2. 「1人の飲食は会議費に置けない」と書いていた。言い過ぎ。作業場所として使った場合を経費にする実務もあるため、方針を決める論点に移した(09)
  3. 1万円基準を会議費の条件のように書いていた。会議の実態があれば会議費に金額の上限はない。1万円は接待の飲食を交際費から外すための基準(07)
  4. 少額減価償却資産を30万円未満と書いていた。令和8年4月1日以後の取得は40万円未満
  5. 「補助は1科目7個まで」を取り下げた。根拠のない数字だった。数は切る理由から決まる

01調べたもの

いま動いている3社のスプレッドシートと、前任者が弥生で付けていた前期の帳簿、弥生に学習させてある辞書10社分。損益の科目に付いている行だけを数えた。

9,147資料から起こした行(3社)
1,665前任者の弥生帳簿の行
1,114弥生の辞書(10社)
307使われている補助の種類
129使われている費目の種類

307種の補助と129種の費目は、どれも誰かがその場で名付けたもの。名付けた時の基準が層ごとに決まっていないので、次の6つの混線が起きている。

02実データで見つかった混線

01

1つの科目に、切り口が何種類も混ざっている

  • 水道光熱費:東京電力(相手)、電気(種類)、電気・ガス代(合体)が並ぶ
  • 消耗品費:AMAZON(買った店)、業務用衣装(用途)、什器備品(物)、消耗品(科目名の繰り返し)
  • 通信費:ワイモバイル(相手)と携帯(種類)
02

中身が分からない時、買った店の名前で補助を切っている

1,195行が補助「AMAZON」
  • 新聞図書費 490行、消耗品費 372行、会社固有の科目 333行
  • 背景:資料の68%(6,200行)はカード明細で、品目が書いていない。分からないので、分かっている相手名を補助にした
03

別の層のものが入り込んでいる

  • カード名が科目名に:未払金(三井住友カード)など10種
  • 引落日が補助に:20250812引落し分
  • 物件名が費目に。科目名が費目に:費目会議費福利厚生費
  • 前任者は支払報酬料(単発)(月額)科目で分けていた
04

「いまの状態」が名前に入っている

197行・15種
  • 1人飲食(税率仮定)経費性要確認費目不明(要確認)それ以外
  • 状態は確認が済めば変わる。名前に入れると、確認が済んだ後も残り、同じものが2つの名前に割れる
05

名前と中身が合っていない

  • 前期帳簿の通信費電話代等に、Netflix・ニコニコ・モバイルWi-Fi
  • 動画配信サービスが、通信費と会社固有の科目の両方に入っている
  • 補助1人飲食に、持ち帰りのコーヒー豆とビニール袋
06

同じものに違う名前

  • タクシー代タクシーレンタカーレンタカー代贈答品接待贈答
  • 水道水道料金水道代東京都水道局
  • 科目名まで割れている:交際費(276行)と接待交際費(227行)
混線の原因

どの層も「何に答える層か」が決まっていない。だから名付けるたびに、その時手元にある情報(相手の名前、確認の状態、用途、物の種類)がそのまま名前になる。段階を4つ用意しても、各層が答える問いを1つに固定しない限り、層は混ざる。

034つの層は、それぞれ別の問いに答える

層ごとに問いを1つだけ持たせる。問いが決まると、その層に入れてよい名前と、機械で確かめる検査が決まる。

答える問い決まると何が決まるか誰が決めるか機械で確かめること
勘定科目決算書で、何の費用として表示するか決算書の行補助から自動会社の科目マスタにある名前だけ
補助科目月末・年末に「合計いくら」と言う必要があるのは、どのまとまりか申告調整・別表・按分・残高の数字費目から自動。飲食だけは金額と人数で分かれる状態の語が無い。相手で切る科目以外に相手名が無い
費目何にお金を払ったか。現物や明細に書いてある言葉で科目・補助・税区分読み取り+辞書1つの費目の中で税区分が割れない(店内・持ち帰りを除く)
取引内容この1件で、具体的に何を、誰と摘要と証拠原文のまま分類しない
税区分は費目で決まる

実データがそのまま示している。補助1人飲食の中で10%と8%が1,131行対721行混ざっているのは困らない。店内か持ち帰りかは1件ごとに変わる事実で、税区分の列が持っているから。

一方、費目サプリ・医薬品の中で8%が71行、10%が79行に割れているのは困る。費目から税区分が決まらず、毎回人が直している。医薬品(10%)と健康食品(8%)は性質が違うので、費目を分ければ1つに決まる。

同じ形で割れている費目は歯科・医療(保険診療の非課税と自費の10%)、物件名が入った費目(家賃・保証料・駐車場が混在)など。店内・持ち帰りの違いを除いて、税区分が割れている費目に入っている行は768行

04補助を切る理由は5つ

補助は元帳で合計と残高が出る単位。合計が必要な場面は次の5つで、上の4つは申告や決算で数字が要るので分けないと作れない。5つ目だけが会社ごとの好み。税区分は理由に入らない(費目の役目)。

理由何の数字に使うかその科目の補助の切り口
損金申告書で足し戻す、または損金にできる額を計算する損金の扱いが違うまとまり接待交際費の飲食費とそれ以外。租税公課の延滞税。保険料の資産計上分
別表別表・支払調書に明細と合計を載せる明細を出す単位少額減価償却資産。外注費・報酬は支払先ごと(支払調書)
按分自宅兼用・社宅の按分率を合計にかける按分率が違う種類水道光熱費の電気・ガス・水道。通信費の携帯・回線
残高貸借対照表の残高を相手ごとに合わせる相手未払金はカード会社。仮払金は支払先。地代家賃は物件
管理月次で見たい。申告には使わない会社が見たい単位旅費交通費のタクシーと電車。会議費の飲食と会場

こうすると、補助の切り口は科目ごとに理由から1つに決まる。外注費を支払先で切るのは支払調書のため、租税公課を税目で切るのは損金にならない税を足し戻すため。相手で切るのが正しい科目(外注費・地代家賃・未払金・仮払金)と、相手で切ってはいけない科目(消耗品費・新聞図書費)の区別もここから出る。

理由が損金別表按分残高の補助は、どの会社でも同じ名前にして共通マスタに置ける。管理の補助だけを会社ごとのマスタに置く。

05科目ごとの4層

左で科目を選ぶ。件数は今回調べた実データの行数。費目の横は、その費目で決まる税区分。

061件ごとに変わる事実は、層でなく列に置く

人数・同席者・店内か持ち帰りかを層(補助や費目の名前)に入れると、組み合わせの数だけ名前が増える。列に置けば増えない。しかも大半は、行ごとに人が入れなくてよい。

何のためどこから埋まるか人が入れる回数
店内/持ち帰り10%か8%か読み取り(レシートの軽減税率の印・To Go の表記)0
単価少額減価償却資産に当たるか読み取り0
支払先辞書を引く鍵・摘要読み取り0
国外事業者か税区分(海外のサービス)相手の辞書相手ごとに1回
源泉徴収の要否源泉徴収・支払調書相手の辞書相手ごとに1回
物件・拠点按分・物件ごとの合計相手の辞書相手ごとに1回
按分率按分会社の設定(補助ごと)会社ごとに1回
対象者(全員/役員のみ)福利厚生費として認められるか会社の設定会社ごとに1回
人数1人当たりの飲食費1枚1万円を超える飲食だけ
同席者社外の人がいたか・相手先の名前(書類の要件)同上
目的1人の飲食・出張の説明方針次第(09の2)

07飲食の判定

実データの飲食 2,276行を、1枚の金額で並べた。

1枚1万円以下なら、何人で食べても1人当たり1万円以下が確定する。人数を聞く必要があるのは、1枚1万円を超える304行(件数の13%)だけ。ただしそこに飲食費の61%のお金が集まっている。

1. 店内か、持ち帰りか
持ち帰り・出前は8%、店内は10%。読み取りで決まる
2. 相手がいるか
1人なら会議でも接待でもない。扱いは会社の方針で決める(09の2)
3. 相手は社内の人だけか
社内だけの飲食は1万円基準の対象外。社内会議の実態があれば会議費、全員参加の行事なら福利厚生費、それ以外は交際費
4. 社外の人がいる。会議か、接待か
会議の実態がある → 会議費。常識的な範囲なら金額の上限はない
接待 → 1人当たり1万円以下は交際費から外れる(下の要件を満たす場合)。1万円超は交際費
5. 書類の要件
日付・相手先の名前と関係・人数・店名と所在地。欠けると1万円以下でも交際費から外せない。摘要の書き方でそのまま満たす(05の接待交際費)

いまの共通マスタは、1枚1万円を超えたら人数を見ずに接待飲食にしている。安全側だが、複数人で1人1万円以下の会食まで交際費に入る。304行の中にどれだけあるかは、人数が無いので分からない。

08共通マスタの誤り

今回の集計で見つかった、全社に効いている共通の費目科目マスタの誤り。直すかは09の4で決めてほしい。

費目いま正しくは実データ
サプリ・医薬品軽減8%に固定医薬品・医薬部外品は10%、健康食品は8%。費目を2つに分ける150行中79行が10%に手直し済み
歯科・医療非課税に固定保険診療は非課税、自費診療は10%。費目を2つに分ける173行中30行が10%
車両関連「オートローン」「ローン」を車両費に当てるローンの返済は費用ではない。元本は借入金、利息は支払利息車両関連 14行・133万円
飲食代1枚1万円超を人数を見ずに接待飲食人数の列で1人当たりを出して決める304行

09決めてほしいこと

01
人数と同席者の列を足すか

足すと1人当たりの金額が自動で出て、接待飲食の1万円判定が機械でできる。人が入れるのは1枚1万円超の飲食だけで、実データでは304行。

足すことを推奨
02
1人の飲食・喫茶をどう扱うか

補助「1人飲食」は1,907行・719万円。うち持ち帰り(8%)が721行。税務の判断なので推奨は出さない。選択肢だけ置く。

  • A 作業場所・移動中の利用として会議費に残し、目的を1語だけ列に残す
  • B 個人の負担として、経費から外す(役員借入金を減らす)
  • C 店内はA、持ち帰りはBのように、性質で分ける
03
1人1万円以下の接待飲食を、どの科目に置くか
  • A 会議費に置く(よくある運用。ただし本当の会議の飲食と混ざる)
  • B 接待交際費に置き、補助「接待飲食(1人1万円以下)」で分ける(申告の時に補助の合計がそのまま使える)
Bを推奨。申告で要る数字が補助の合計として出る
04
共通マスタの誤り(08の4件)を直してよいか

共通マスタは全社の読み取りに効く。直す前に控えを取り、直した費目に当たっている既存の行は確認の状態を「未確認」に戻す。

05
既存の行の付け替えをいつやるか

補助「AMAZON」1,195行、状態の語が入った補助197行、補助「1人飲食」1,907行、表記の揺れ。02と03が決まってから、補助ごと一括で付け替える。控えを取り、戻せる形でやる。

判定基準の出所(2026年9月18日 確認)

法令で決まる金額と期限は改正で変わる。改正の時期に一次情報で見直す。集計は ツール/会計/勘定科目の分類設計/scripts/実データ集計.py で出し直せる。