勘定科目の分類設計

スキャンした書類をスプレッドシートに起こし、そこから科目・補助・税区分を自動で決めるための、分類の切り方。4段階の役割と、科目ごとに何を基準に分けるかを定める。

2026年9月18日 / 対象=顧問先の会計処理の自動化

01いま動いている4段階

すでに4段階で動いている。稼働中のシート(9,417行)から実際の1行を並べる。

取引内容 本日のコーヒー・
ドリップバッグ10P
現物に書いてある事実。分類しない、原文のまま残す。
費目 喫茶・ドリンク 日常語の見出し。ここを決めると下3つが自動で決まる。
補助科目 1人飲食 元帳で残高を並べて見る単位。
勘定科目 会議費 決算書に出る。税法で決まる。自由度なし。

つまり足りないのは段階ではなく、各段階に何を入れるかの基準。いまは基準がないので、実際にこの行は持ち帰りのコーヒー豆とビニール袋なのに「1人飲食」が付いている。人数は誰も確認していない。

段階の向きについて

勘定科目 > 補助科目 > 費目、という包含関係にはならない。同じ費目「飲食代」が、金額と相手によって会議費にも接待交際費にも飛ぶ(実データで両方発生している)。費目は補助の下位ではなく、科目・補助・税区分を決めるための入力キーとして独立している。この形は正しいので変えない。

02分ける理由は4つしかない

補助を何で切るか迷うのは、切る理由を決めていないから。理由は4つで、上3つは分けないと申告が作れないので必須。4つ目だけが会社ごとの任意。

理由何が変わるか必須
税区分が割れる10% / 軽減8% / 非課税 / 対象外福利厚生費の中で、歯科(非課税)とサプリ(軽減8%)と整体(10%)必須
損金の扱いが変わる全額 / 50% / 交際費枠を食う接待交際費の中で、飲食(50%特例あり)とゴルフ・贈答(なし)必須
資産計上・按分の判定一括経費 / 少額資産 / 減価償却、按分率消耗品費の中で、10万円未満と30万円未満。水道光熱費の電気とガスで按分率が違う必須
月次で見たい単位何も変わらない。経営の見え方だけ広告宣伝費をWeb広告と印刷物で分ける任意

この4つのどれにも当たらない分け方は、作らない。補助が増えるほど入力時のプルダウンが長くなり、同じものが別の補助に入って残高が割れる。

03階層に入れるもの、属性で持つもの

ここが設計の芯。「1人で飲食したか、2人で飲食したか」を分類名に入れてはいけない

属性として列で持つ推奨

組み合わせても増えない

  • 人数(数値)── 1万円判定の分母になる。カテゴリにすると3人・5人で無限に増える
  • 社外の同席(社内のみ/社外あり)── 法令上の分岐点。社内だけの飲食は1万円基準が使えない
  • 店内 / 持ち帰り── 10%か軽減8%かが決まる
  • 相手先名── 交際費の書類保存要件
  • 支払手段、インボイス番号の有無

階層(補助科目)に入れる

重ならない・漏れない単位で

  • 支出の性質が違うもの(飲食と会場代)
  • 税区分が常に違うもの(ICチャージと電車代)
  • 損金の扱いが違うもの(接待飲食と接待ゴルフ)
  • 按分率が違うもの(電気とガスと水道)
なぜ属性に出すのか

人数を補助名に入れると、飲食 × 人数 × 社内外 × 持ち帰りで数十の補助ができ、元帳が読めなくなる。しかも人数は領収書に書いていないので、読み取りでは決まらない。数値の列にしておけば、1人当たり金額=税込金額÷人数 が自動計算され、判定を機械に任せられる。空欄なら「未確認」として残り、埋めた瞬間に科目が確定する。

04飲食の判定(自動化できる部分)

飲食は分岐が多いので、順番を固定する。上から順に当てれば、人が悩むのは最後の1問だけになる。

1. 店内か、持ち帰りか
持ち帰り・出前 → 軽減8%/店内飲食 → 10%。レシートの品目と「※軽減」表記で機械判定できる
2. 相手に社外の人がいるか
社内のみなら1万円基準は使えない(社内飲食費)。残業食事代などは福利厚生費、役員だけの飲食は原則損金にならない。ここは領収書から読めないので人に聞く
3. 1人当たりいくらか
税込金額 ÷ 参加人数。1万円以下なら交際費から除外して会議費1万円超なら接待交際費・接待飲食(飲食費50%特例の対象)
4. 書類の要件を満たすか
日付・相手先の名称と関係・参加人数・店名住所。1つでも欠けたら交際費から外せないので、1万円以下でも会議費にできない

この順にすると、自動で決まるのは 1 と 3、人に聞くのは 2 と 4 だけ。しかも 1万円を超えた行だけ 聞けばいい。1万円以下で社外同席が不明な行は、結果が変わらないので放っておける。

既存データについて

いま補助に「1人飲食」が付いている行は、人数を確認した結果ではない。1人での飲食は相手がいないので会議費の要件を満たさず、本来は会議費に置けない。補助名を 打合せ飲食 に改め、人数は列に移すのが筋。既存行は補助ごと一括で置き換えられる。

05科目ごとの切り口

主要科目について、補助を何で切るか。「切り口」の欄が、その科目で分類を増やすときの唯一の基準になる。ここに当てはまらない補助は作らない。

勘定科目切り口補助科目分ける理由
旅費交通費移動手段 電車・バス代/タクシー代/駐車代/高速代/レンタカー/ICチャージ/宿泊費 ICチャージは資産の移動で対象外、他は10%。税区分が割れる
会議費場と形態 打合せ飲食/打合せ喫茶/会場・レンタルスペース/会議資料・備品 飲食だけが1万円基準と書類要件の対象。会場代は金額に関係なく会議費
接待交際費支出の形態 接待飲食/接待ゴルフ/贈答・手土産/慶弔/会費 飲食費だけに50%損金算入の特例。分けないと申告調整ができない
福利厚生費給付の種類 歯科・医療費/鍼灸/サプリ・医薬品/食料品/整体・マッサージ/化粧品・美容/慶弔見舞 非課税・軽減8%・10%の3つに割れる。同じ科目の中で税区分が最も乱れる場所
消耗品費用途と金額 事務用品/日用品(業務用)/業務用衣装/工具器具(10万円未満)/少額資産(30万円未満) 10万・20万・30万で資産計上の扱いが変わる。少額資産は別表の添付が要る
通信費回線・役務の種類 携帯電話/固定・インターネット/ソフト・サブスク/郵送・宅配 家事按分の率が種類で違う。サブスクは継続課金なので残高で追う必要がある
水道光熱費供給の種類 電気代/ガス代/水道料金 按分率が種類ごとに違う。まとめると按分計算ができない
新聞図書費媒体 新聞(定期購読)/書籍代/電子版・有料記事 週2回以上発行の新聞の定期購読は軽減8%。電子版は10%
車両費支出の性質 ガソリン代/車検・整備/自動車保険/自動車税 保険は非課税、税金は対象外。租税公課・保険料へ振り替える判断もここで見る
広告宣伝費媒体 Web広告/印刷物/取材・制作費/販促品 期をまたぐ広告は前払費用になる。媒体で分けておくと判定できる
支払手数料相手の種類 銀行手数料/決済手数料/士業報酬/プラットフォーム利用料 士業報酬は源泉徴収が要る。国外事業者への支払はリバースチャージの判定対象
地代家賃物件の用途 事務所家賃/駐車場/社宅 居住用は非課税、事業用と駐車場は10%
仮払金相手先ごと (支払先の名前をそのまま補助に) 中身が分からないものの置き場。補助が相手名なら、判明時に一括で置換できる
雑費切らない 補助を作らない 補助を作ると溜め場になる。分からないものは雑費でなく仮払金へ

06費目の作り方

費目は、現物に書いてある言葉に近づける。「ガソリン代」「駐車代」「施術代」のように、但し書きをそのまま拾える語にしておくと、読み取りの精度がそのまま分類の精度になる。会計の語(会議費・福利厚生費)を費目に持ち込まない。それは科目の仕事。

費目に向く語

現物に書いてある

  • ガソリン代、駐車代、高速代
  • 飲食代、喫茶・ドリンク、食料品
  • 書籍代、事務用品、業務用衣装
  • 整体・マッサージ、歯科・医療

費目に向かない語

判断が入っている

  • 会議費、接待交際費 ── 科目そのもの
  • 1人飲食、接待飲食 ── 人数と相手の判断が入っている。これは補助か属性
  • その他、雑費 ── 何も決まらない

07決めてほしいこと

01
人数と社外同席を、列として追加するか

追加すると1万円判定が自動になる。ただし読み取りでは埋まらないので、1万円超の行だけ人が入れることになる。追加しない場合、飲食は全部その場で人が判断し続ける。

追加を推奨。1万円超は全体の数%で、聞く回数は月に数件で済む
02
補助「1人飲食」を「打合せ飲食」に改めるか

既存の該当行は補助ごと一括で置き換えられる。置き換えた行は確認ステータスを未確認に戻し、人が見ていないものを確認済にしない。

改名を推奨。いまの名前は人数を確認した結果ではないため
03
この切り口を全社共通にするか、会社ごとに持つか

上の表のうち「必須」の3理由で切った補助は、どの会社でも同じになる。「月次で見たい単位」だけが会社ごとに違う。共通と会社別を同じ入れ物に入れると、過去に1,024行がまるごとコピーされた事故が起きている。

必須の3理由は共通マスタ、管理目的の分けだけ会社マスタ、を推奨
04
補助の数の上限を決めるか

会計ソフト側のプルダウンが長くなると入力が破綻する。1科目あたりの補助を何個までにするか決めておくと、増やすときの歯止めになる。

1科目7個までを推奨。8個目が要るときは科目を分けるべき合図

判定基準の出所(2026年9月18日 確認)

法令で決まる金額は改正で変わる。この基準は1か所の表に置き、改正時に一次情報で見直す。